会社の成長に伴い、経理業務の負担が増大しているという企業も多いのではないでしょうか。コア業務が忙しく、領収書整理や請求書発行、月次決算などの経理業務に十分な時間を割けないとお悩みの方も多いでしょう。
また「経理担当者を雇うべきか、経理代行を活用すべきか」という判断に迷っている経営者や担当者の方も少なくありません。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを導入していても、経理の知識がないため処理に時間がかかるというケースもよく聞きます。
そこで本記事では、経理代行の相場や依頼先、メリット・デメリット、注意点などについて詳しく解説します。経理業務の外注を検討している方や、依頼すべきかどうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
経理代行とは?

経理代行とは、企業の経理業務を外部の専門業者に委託するサービスのことです。主に小規模・中規模企業が利用するケースが多く、経理担当者を雇うよりもコストを抑えられる場合があります。
経理代行で依頼できる業務は、記帳代行、給与計算、決算処理、請求書発行業務などさまざまです。例えば、領収書や請求書、通帳のコピーなどをまとめて送付するだけで、仕訳処理から月次決算書の作成までを代行してもらえます。
経理代行を依頼するメリット

経理代行を依頼することで得られる主なメリットは以下の3つです。
- メイン業務に注力しやすくなる
- 経理のミスや不正の予防に繋がる
- 経理人材を確保しなくてもよくなる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
(1)メイン業務に注力しやすくなる
経理代行サービスを利用することで、経理の負担を大きく削減して、社内の人材がメイン業務に集中できます。例えば、月に数十時間かかっていた経理業務がなくなれば、その時間を新規顧客の開拓や既存顧客へのフォローアップに充てることが可能です。
特に中小企業では、社長自身が経理業務を担当していたり、他の業務を担う従業員が兼任していたりすることが少なくありません。経理業務は日々の取引記録から月次決算、税務申告まで、定期的かつ継続的に発生します。
この業務に多くの時間を費やすことで、本来注力すべき営業活動や商品開発、顧客対応などのコア業務が圧迫されてしまうのは明白です。その点、アウトソーシングができれば、企業の売上向上や事業拡大など、成長につながる活動に集中できるようになり、経営効率が改善されるでしょう。
(2)経理のミスや不正の予防に繋がる
経理代行サービスでは、経理のプロによる質の高い業務を依頼できます。専門知識を持ったスタッフが正確な処理を行うため、ミスのリスクを減らせます。
経理業務を兼任している場合、支払いを忘れたり、送金額を間違えたりして、取引先に迷惑をかけてしまうなどのミスが生じることも少なくありません。特に小規模な企業では、経理担当者が一人ですべての業務を担当していることが多く、チェック機能が働きにくい状況にあります。
また、経理の専門知識や経験が不足していると、会計処理や税務申告で誤りが発生するリスクも高まります。後になってこうしたミスを税務調査で指摘されると、追徴課税などのペナルティを受ける可能性もあります。
経理代行サービスであれば、社内で経理業務を完結させる場合と比べて、第三者の目が入ることで不正行為の抑止効果も期待できます。
(3)経理人材を確保しなくてもよくなる
経理代行を利用すれば、人材確保の悩みからも解放されます。サービスを利用するだけで採用活動や教育にかかるコストや時間を節約でき、安定した質の高い経理業務を実現できるからです。
専門性の高い経理の人材は、確保が難しいのが現実です。特に中小企業では、経験豊富な経理担当者を採用することはそう簡単にいきません。
経理部を立ち上げようとしても、経理の専門知識や経験があり信頼できる人材の採用に至るまでには時間がかかります。また良い人材を雇用できても、もし定着せず急な退職となれば、うまく引き継ぎができず社内も混乱するでしょう。
その点、経理代行サービスであれば担当者が退職となった場合の体制も整っており、継続的に質の高いサービスが受けられます。
経理代行を依頼するデメリット

経理代行を依頼する際には、以下のようなデメリットも考える必要があります。
- 自社にノウハウが蓄積されない
- 緊急の対応が困難になる
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
(1)自社にノウハウが蓄積されない
経理代行を利用することで、経理人材を確保する必要がなくなる一方、社内に経理のノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。
経理業務を外部に委託すると、日々の取引処理や月次決算、税務申告などの実務経験が社内に残りません。そのため、将来的に経理業務を内製化したいと考えた場合、一から体制を構築する必要があります。
外部委託によって経理業務の詳細を把握していないと、財務状況を正確に理解し、迅速な経営判断を下すことが難しくなることもあるでしょう。特に成長段階の企業では、将来的な上場やM&Aを見据えると、ある程度の経理知識を持った人材を社内に育成しておくことも重要です。
(2)緊急の対応が困難になる
経理業務を外部委託すると、自社内で処理する場合と比べて、どうしてもタイムラグが発生します。特に急な資金繰りの確認や、取引先からの問い合わせに対する緊急の対応が必要な場合などでは、経理代行業者とのやり取りに時間がかかります。
通常、経理代行業者は複数の顧客を抱えているため、繁忙期には対応が遅れる可能性もあります。年度末や決算期など、多くの企業が同時に経理業務を依頼する時期は要注意です。
さらに、経理トラブルが発生した際の責任の所在が不明確になりやすいという問題もあります。自社内で対応できないため、問題解決に時間がかかることもあるでしょう。
このようなデメリットを理解し、対策方法についても考えたうえで依頼を検討することが大切です。
経理代行はどこで依頼できる?

経理代行を依頼できる主な会社は以下の3つです。
- 税理士事務所
- 会計士事務所
- アウトソーシング会社
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
(1)税理士事務所
税理士事務所は、記帳代行や決算書作成、税務申告などの税務関連業務が得意です。法人税や消費税の申告業務も依頼できるため、税務面でのサポートを重視する企業に適しています。
税理士事務所に依頼するメリットは、税務に関する専門的なサービスが受けられる点です。税制改正への対応や節税対策のアドバイスなど、単なる経理処理だけでなく、税務面でのコンサルティングも期待できます。
一方、デメリットとしては、経理業務全般(給与計算や支払処理など)は対応範囲外の場合もある点が挙げられます。税理士事務所によっては、税務申告に直結する業務以外は対応していないケースもあるため、事前に業務範囲を確認してください。
また、税理士事務所は12月〜3月に業務が集中する傾向があり、この時期は対応が遅れることもあるため、早めに相談するよう注意が必要です。
(2)会計士事務所
会計士事務所は、監査業務や財務分析を強みとしています。主に上場企業や中規模以上の企業向けのサポートを提供していることが多い傾向です。
会計士事務所に依頼するメリットは、会計基準に沿った適正な経理処理ができる点です。将来的な上場を目指す企業や、投資家への財務報告が必要な企業にとっては特に価値があります。
また、財務分析や経営コンサルティングなど、経理業務を超えた専門的なアドバイスが受けられることもあります。企業の成長戦略や資金調達に関するサポートを受けられる場合もあるでしょう。
デメリットとしては、税務申告などの税理士業務に対応していない場合があることです。会計士と税理士は別の資格であるため、依頼したい場合は税務申告業務に対応可能な税理士が在籍しているかを確認することが大切です。
(3)アウトソーシング会社
アウトソーシング会社は、経理業務全般を一括で代行できる専門企業です。近年では、クラウドシステムを活用し、リアルタイムで経理状況を把握できるサービスも増えてきました。
アウトソーシング会社に依頼するメリットは、業務範囲が広く、記帳代行から給与計算、請求書発行、支払処理まで、経理業務をワンストップで依頼できる点です。また、クラウド会計ソフトとの連携が進んでいるため、データ連携がスムーズで、リアルタイムに経理状況を確認できるサービスも多い傾向です。経営者がいつでも財務状況を把握できる点は大きなメリットといえるでしょう。
デメリットとしては、税務関連業務は対応外のため、別途税理士との契約がスタンダードな方式となっている点です。決算書の作成までは対応していても、税務申告は税理士の業務範囲となるためです。
またアウトソーシング会社によってサービス内容や品質にばらつきがあるため、選定には慎重さが求められます。
経理代行の料金相場

経理代行の料金相場は、提供されるサービスの種類と範囲、企業の規模、取引の量や複雑性に基づき変動します。以下では税理士事務所・会計士事務所、アウトソーシング会社でのそれぞれの相場を紹介します。
- 税理士事務所・会計士事務所の相場
- アウトソーシング会社の相場
それぞれの料金相場について詳しく見ていきましょう。
(1)税理士事務所・会計士事務所の相場
税理士法人が提供する記帳代行サービスの料金は、仕訳の件数やその内容の複雑さに応じて決定されるのが一般的です。1件あたりの仕訳に対しておおよそ50円〜100円程度が相場となります。例えば1件100円で、月間の仕訳件数が100件以内の場合、月額の費用はおおよそ1万円程度になると考えられます。
また、仕訳の件数が多い場合には、1件あたりの単価を割安にする、ボリュームディスカウントという制度を適用している税理士法人や会計事務所も多い傾向です。最近では、会計ソフトとの連携が可能なサービスも増えており、クラウド会計ソフトを利用している場合は、データ連携によって効率的に記帳代行を依頼できます。この場合、システム連携の初期設定費用が別途かかることもあります。
(2)アウトソーシング会社の相場
アウトソーシング会社に関しては、一般的に決まった相場というものは存在しません。料金は、委託するサービスの内容や範囲、企業の規模、さらには取引量や処理の難易度によって大きく異なります。
費用感を把握する一つの目安として、社内で同様の業務を担当する経理スタッフの給与水準が参考になります。たとえば、対象となる業務を担う社員を雇用した場合、その月給が20~30万円程度であれば、アウトソーシングの費用もおおよそ同程度になるケースが多いです。
経理代行の料金相場と自社で雇用するコストはどちらが高い?

経理代行の料金と自社で経理担当者を雇用するコストを比較してみましょう。
まず、経理担当者を1人雇う場合のコストは以下のとおりです。
- 月給:20~35万円+社会保険料・福利厚生費
- 経験者を採用する場合の相場:年収400万円以上
一方、経理代行を利用する場合のコストは以下のとおりです。
- 業務範囲を限定した場合:月額5~10万円程度
- フルアウトソーシングした場合:月額20万円以上
上記のとおり、担当者を雇うよりは安くなる可能性もあるという計算です。
ただし、以下の条件によっては、料金が増加することもあります。
- 専門家による高品質なサービスを求める
- 経理業務が複雑化している
- 経理スタッフが常駐して業務を代行する
とはいえ、採用コストや教育コスト、離職リスクなども考えると、経理代行の方がコスト効率の良い場合が多いです。特に小規模企業では、経理担当者を1人雇うよりも、経理代行を利用する方が総合的な負担を軽減できるでしょう。
また、繁忙期のみアウトソーシングして、通常時は社内で対応するというハイブリッド型の運用も効果的です。例えば、日常的な記帳業務は社内で行い、月次決算や年末調整、確定申告などの専門性の高い業務だけを外注するという方法もあります。
経理代行を依頼する際の注意点

経理代行を依頼する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 依頼する業務内容を見極める
- 提出する資料を整えておく
- 依頼時期に注意する
- 費用対効果を確認する
- セキュリティ対策の有無を確認する
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
(1)依頼する業務内容を見極める
経理代行を依頼する際には、まず自社でどの業務を外部委託するかを明確にすることが重要です。記帳、給与計算、請求書発行など、どこまで委託するかを具体的に決めておきましょう。
業務内容を明確にしないまま契約すると、想定外の追加費用が発生したり、必要な業務が対応範囲外だったりするトラブルが起こりやすくなります。契約前に依頼したい業務の詳細リストを作成し、見積もりを取ることをおすすめします。
また、税務申告が必要な場合は、経理代行業者が税理士と連携できるかどうかも確認しておくことが大切です。経理代行業者によっては、提携している税理士事務所を紹介してくれるサービスもあります。
業務の範囲を決める際には、自社の強みや弱みを考慮し、苦手な業務や時間がかかる業務を優先的に外部委託すると良いでしょう。
(2)提出する資料を整えておく
経理代行をスムーズに進めるためには、提出する資料をあらかじめ整理しておくことが重要です。領収書や請求書の整理、会計ソフトとの連携をスムーズにするため、資料はきちんとファイリングしておきましょう。
資料が整理されていないと、経理代行業者の処理に時間がかかり、結果的に料金も高くなる可能性があります。また、資料の不備や不足があると、正確な経理処理ができず、後から修正が必要になることもあります。
特に記帳代行を依頼する場合は、取引の内容がわかる資料(請求書、領収書、通帳のコピーなど)を月ごとにまとめておくと効率的です。給与計算を依頼する場合は、勤怠データや各種手当の情報を正確に提供することが重要です。
可能であれば、資料の提出方法も事前に確認しておきましょう。郵送やメール、クラウドストレージの利用など、業者によって対応方法が異なります。
(3)依頼時期に注意する
経理代行を依頼する際、決算直前や12月〜3月の繁忙期は、依頼が集中して対応に遅れが発生することもあります。
特に年末調整や確定申告の時期は、多くの企業や個人が同時に依頼するため、経理代行業者も忙しくなります。この時期に新規で依頼すると、対応が間に合わなかったり、特急料金が発生したりすることもあるでしょう。
そのため、年度の途中や繁忙期の前に契約を結んでおくことをおすすめします。4月や5月など、比較的落ち着いた時期に契約すれば、スムーズに業務を引き継いでもらえるでしょう。
また、月次の締め日や提出期限についても、事前に確認しておくことが重要です。自社の業務フローと経理代行業者のスケジュールを合わせることで、効率的な運用が可能になります。
(4)費用対効果を確認する
経理代行を依頼する際には、単なるコスト削減だけでなく、総合的な費用対効果を確認することが重要です。自社で雇うよりコスト削減できるかどうかを見極めるため、以下の観点から費用対効果を評価すると良いでしょう。
- 直接的なコスト(経理担当者の人件費 vs 経理代行の料金)
- 間接的なコスト(採用コスト、教育コスト、オフィススペース、福利厚生など)
- 業務の質と効率性(正確な処理が可能か、処理スピードはどうかなど)
- 経営者や従業員の時間的余裕(本業に集中できる時間がどれくらい創出できるか)
単なるコスト削減ではなく、経理の効率化やリスク管理の視点も重要です。例えば、経理代行によって月次決算が早く完了し、タイムリーな経営判断ができるようになれば、それは大きな付加価値といえます。
また、経理代行を利用することで得られる専門的なアドバイスや、最新の会計・税務情報も重要な価値です。これらの総合的な観点を考慮して、経理代行の導入を検討しましょう。
(5)セキュリティ対策の有無を確認する
経理代行を依頼する際には、セキュリティ対策の有無を必ず確認しましょう。経理情報には、企業の機密情報や個人情報が含まれているため、情報漏えいのリスクを最小限に抑える必要があります。
特にクラウドサービスを利用する場合は、情報漏えいのリスクを考えることが重要です。
- データの暗号化
- アクセス権限の管理
- バックアップ体制
- 経理代行業者との守秘義務契約
- 経理代行業者の情報管理体制
- 契約書の確認(守秘義務や情報管理に関する条項)
- 経理代行業者のオフィスセキュリティ
- 経理代行業者の従業員教育の状況
上記に加えて、実際に訪問してセキュリティ対策の状況を確認できれば理想的です。訪問が難しい場合でも、ホームページは必ず確認しましょう。情報セキュリティに関する認証(ISO27001など)を取得している業者であれば、一定水準以上のセキュリティ対策が期待できます。
経理代行で迷ったらReaLightへ
専門家に経理代行を依頼すればコア業務に集中でき、ミスの防止や人材確保の課題も解決できます。
経理代行を依頼できるのは、税理士事務所、会計士事務所、アウトソーシング会社です。それぞれ得意分野や対応範囲が異なるため、慎重に確認・選定しましょう。また導入を検討する際は、業務範囲の明確化、資料の整理、依頼時期、費用対効果、セキュリティ対策について確認することが大切です。
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