梅雨も明けて本格的な夏日になってきましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。セミの声が良く聞こえるようになって、夏が来たなぁと思うと同時に、オリンピックイヤーの夏でもあり、コロナウイルスの状況も先行きがまだ見えない中で、今年の夏は何か混沌とした雰囲気を感じています。
さて、今回は株式上場(IPO)のお話ができればと考えています。2021年1月~6月の半年間で、東京証券取引所に上場した会社数は59社(東証1部:3社、東証2部:2社、マザーズ:37社、JASDAQ:11社、TOKYO PRO Market:6社)となっています。毎年100社程度が上場する中で、例年よりも早いペースで上場社数が積みあがっている印象です。特に今年6月のIPO社数は24社となっており、IPOラッシュが起こっています。
そこで、株式上場(IPO)のための、基本的事項をここで少し触れたいと思います。
株式上場(IPO)とは
他の取引所に上場していない会社が東京証券取引所(「東証」と略します)に上場することを、「IPO(新規株式公開)」や「直接上場」といいます。
また、他の取引所に既に上場している会社が、東証に上場することを、「経由上場」(鞍替えなどと言われることもあります)といいます。「経由上場」の場合も新規上場としてIPOと同じ基準に基づいた審査を受ける必要があります。
東証の中には、市場第一部(東証1部)、市場第二部(東証2部)、マザーズ、JASDAQ及びTOKYO PRO Marketの5つの市場があります。
なお、市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード及びグロース)の5つの市場区分に関して、2022年4月をめどに、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの市場への見直しを行うことが予定されています。
それぞれの市場において上場のための形式基準(数値基準)がありますが、最近のIPO企業の規模(2017年~2019年までのIPO企業)は以下のようになっています。
(出所:東京証券取引所HP)
株式上場準備の概要
上場準備は、一般的に3年程度かけて行われます。まず始めの1年は下の図にあるように、ショートレビュー(監査法人等による短期調査のこと)を受け、現状の社内体制等の調査が実施されます。そのうえで、直前々期・直前期の2年間で、上場に向けて、証券会社や監査法人など関係者のアドバイスをもとに、社内体制の整備を進めていきます。また、上場申請までに、申請直前2期間分(直前々期・直前期の2年間分)の監査証明が必要になります。
(出所:東京証券取引所HP)
社内体制の整備においては、特に以下の点が重要な社内体制整備になります。
内部管理体制
①規程類の整備
②ガバナンス体制の構築
③利益計画、予算統制の構築
④内部監査体制の構築
⑤上場審査対応(Ⅰの部・Ⅱの部作成、上場審査質問対応)
J-SOX対応
①評価ポリシー、評価範囲の決定
②3点セット整備(IT統制含む)
③評価体制の整備
経理体制
①会計方針書の整備
②決算体制(連結含む)の構築
③決算早期化
資本政策
①株主構成の是正(IPO形式要件の対応、公開前規制の対応)
これらの整備を直前々期までに実施し、直前期には運用実績を作ることが求められます。また、これらの整備の目的としては、以下のような上場審査上の重要な指摘事項が出ないようにするためでもあります。
上場審査のよくある重要な指摘事項
・法令違反、法令違反(労務:36協定違反、未払い残業等)
・顧客情報の漏洩等(情報セキュリティの脆弱状態等)
・税務調査での調査結果(修正申告、更正決定、重加算)
・係争、紛争問題
・反社勢力排除の失敗、調査不十分
・内部監査計画(1年間で店舗及び事業所を往査する計画かどうか等)
・利益操作、循環取引をうたがわれるグループ間取引の排除
これらのような重要な指摘事項があると、上場承認がおりず、上場延期等を余儀なくされる結果となりかねないため、留意が必要です。
最後に
いかがでしたでしょうか。簡単ではありますが、少しでも株式上場のイメージを掴んでいただくことができましたら幸いです。上記でも触れました通り、2022年4月をめどに、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの市場への見直しを行うことが予定されています。この点についても、また次回以降で触れさせていただければと思います。
弊社では株式上場準備の知見を有する会計士が多数在籍していますので、何かお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。