6月も下旬に差し掛かり、早いもので2021年ももうすぐ半分が終わろうとしていますね。時間が過ぎるのが早いですね、という会話を毎年している気がして、1日1日を大切に出来ればと改めて思う今日この頃です。
さて、毎年この5月~6月は、3月決算会社の決算発表の時期になっており、各社の1年間の決算が出揃う時期になっています。弊社では決算支援や決算体制構築支援といった、会社の決算業務に関わらせていただく仕事の中で、決算書に触れる機会が多くあります。その中で得た「決算書の読み方」のノウハウの一部をお伝えできればと思います。
1. 前提知識① ~決算書の探し方3選~
決算書の読み方の話の前に、まず「決算書ってどこで見ることができるの?」という疑問がある方もいらっしゃるかと思います。これはいくつか調べ方がありますが、上場会社を前提にすると、以下が代表的な例になります。
EDINETで探す
EDINETは金融庁が運営している、上場会社の決算書の検索サイトになります。
★適時開示情報閲覧サービスで探す
証券取引所が運営するサイトで、上場会社のIR情報(IR情報:会社が株主や投資家に向けて公表する情報のこと)がタイムリーに掲載されていきます。ここで決算書の速報として公表されるのが、「決算短信」と呼ばれる書類になります。
https://www.release.tdnet.info/inbs/I_main_00.htm
会社のHPのIRライブラリで探す
上場会社の場合、ほとんどの会社でHP上に投資家向けのIRライブラリがあり、その中に決算書のデータが格納されています。
2.前提知識② ~そもそも、決算書とは? 財務三表を知ろう~
決算書とは、平たく言えば、「会社が今持っている財産」と「会社の1年間の業績」を集計したものです。固い言葉で言うと、「会社の財政状態」と「経営成績」を示すものになります。前者の「会社の財政状態」を示すものが「貸借対照表(B/Sと呼ばれます)」、後者の「経営成績」を示すものが「損益計算書(P/Lと呼ばれます)」になります。これに、会社のお金の収支をまとめた「キャッシュフロー計算書」を合わせた3つが、よく「財務三表」と呼ばれるものになります。
この財務三表が最も重要な書類ですので、決算書の範囲は本当はもう少し広いのですが、ここでは簡便的に「決算書≒財務三表」と思っていただいて差支えありません。
貸借対照表
「会社の財政状態」を示すものであり、会社がもっているお金やモノといった資産と、借入金などの負債を集計したものになります。
損益計算書
「会社の経営成績」を示すものであり、会社の売上や費用、それによって発生する利益(あるいは損失)を集計したものになります。
キャッシュフロー計算書
「会社の収支」を示すものであり、どのようにお金が入り、どのようにお金が出ていくのかを集計したものになります。
3.結局、マストで読むべき資料は?~この2つを読めばわかる!~
決算書の定義としては、なんとなく分かった部分もあるかと思いますが、実際に上記「前提知識①~決算書の探し方~」のいずれかの方法で、特定の調べたい会社名を検索しても、いろんな資料が出てきてどれを読めば良いか分からないと思います。そこで、特にマストで読むべき資料だけをピックアップすると、以下の2つになります。
決算短信
上記でも記載した「決算短信」が、会社の財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の速報版の決算書になり、多くの投資家が目にする資料です。基本的にはこの資料を見ると、大まかにその会社の決算が分かります。
決算説明資料
会社のHPのIRライブラリ等に掲載されている、投資家向けの決算説明資料です。パワーポイント等で作られており、上記の決算短信の内容が分かりやすくまとめられています。
これらの資料の中で、どの会社でも共通して見るべきポイントがありますので、以下で2つ紹介させていただければと思います。
4.決算書のここを見る! ポイント① ~安全性分析:流動資産>流動負債となっているか?~
決算書の中で、貸借対照表のうち、「流動資産」と「流動負債」という項目があると思います。「流動資産」は、その会社が1年以内に得られるお金の額を表しています。「流動負債」は逆にその会社が1年以内に払わないといけないお金の額を表しています。単純に考えると、「1年以内に得られる予定のお金」が「1年以内に払う予定のお金」よりも多ければ、少なくとも1年間は「お金がなくて支払ができない!」という状態には陥りにくいと思います。そういった意味で、「流動資産>流動負債」となっていれば、その会社の財政状態の安全性が高い、と言えます。
さらに言うと、「流動資産」の中にある「現預金」と、「流動負債」の中にある「借入金」および「固定負債」の中にある「長期借入金」の合計を比較して、「現預金」の額の方が多ければ、よりその会社の財政状態の安全性が高いと言えます。「明日借金を返してください」と仮に銀行から言われても、すぐに現金で返すことが出来るキャッシュを持っている、というイメージです。
ただ、このような安全性の高さは、裏を返すと、将来への投資を積極的にはできていない会社とも考えられます。安全性が高いということは、今すぐには倒産はしにくい会社、と言えますが、逆に言えば、将来への投資をせずにキャッシュが寝かされている状態にある、というイメージです。そのバランスが大事、ということですね。ここは、決算書を読む側の考え方によって評価が分かれるかと思います。
安全性分析 流動資産>流動負債となっているか?
「流動資産」は、その会社が1年以内に得られるお金の額を、「流動負債」は逆にその会社が1年以内に払わないと行けないお金の額を表しています。「流動資産>流動負債」となっていれば、その会社の財政状態の安全性が高い、と言えます。
5.決算書のここを見る! ポイント②~収益性分析:営業利益率は業界平均と比べて高いか?営業キャッシュフローはプラスか?~
決算書を読むにあたって、やはり一番気になるのは、その会社が儲かっているか?という点かと思います。儲かっているかどうかを判定するには、もちろん最終的な利益がプラスになっていることが重要ですが、ここでは本業での利益を示す「営業利益」に着目したいと思います。
「営業利益」は、その会社の「本業の中で稼ぎ出した利益」を示し、これがプラスであることが重要ですが、さらに「本業での売上のうち、何パーセントが利益になったか?」を示す「営業利益率」がとても重要です。この営業利益率が、その会社が属している業界の平均と比べて高いか?低いか?、を見るとその会社が業界の中で上手くいっているかが分かると思います。業界の平均営業利益率はネットで検索すると出てきますが、業界によって営業利益率は異なります。その業界が薄利多売であれば営業利益率は低いでしょうし、その逆であれば営業利益率は高いです。
また、営業利益率以外の指標として、キャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」がプラスになっているか?も重要です。営業キャッシュフローは、本業の稼いだお金と本業で支払ったお金の収支を表しており、これがプラスということは、本業でお金を生み出せているということになります。
収益性分析 営業利益率は業界平均と比べて高いか?営業キャッシュフローはプラスか?
営業利益率が、その会社が属している業界の平均と比べて高いか?低いか?、を見るとその会社が業界の中で上手くいっているかが分かります。
また、キャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」がプラスになっている場合、本業でお金を生み出せているということになります。
6.最後に
いかがだったでしょうか?決算書を一から読むのは中々ハードルが高いですが、会計や簿記に馴染みのない方でも、ポイントを絞って読んでみると何か気付いたりする点があるかと思います。ぜひ一度、どこかご興味のある会社の実際の決算書を、今回お伝えしたポイントを踏まえて読んでみていただければ幸いです!