起業したばかりの方々にとって、経理作業は避けて通れない重要な業務ですが、専門的な会計ソフトの導入コストが悩みの種になっていませんか?
そこで、身近なツールであるエクセルを活用すれば、無料で会計作業を行うことができます。エクセルは柔軟性が高く、基本的な会計知識さえあれば、自社のニーズに合わせたカスタマイズも可能です。
しかし、正しい使い方を知らないと、かえって手間がかかってしまうことも少なくありません。
そこで今回は、エクセルを会計ソフトとして効果的に活用する方法や、無料で使えるテンプレートの紹介、そしてそのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
この記事をお読みいただき、コストを抑えながら効率的に会計作業を行うヒントをつかんでいただけると幸いです。
会計ソフトの代わりにエクセルを使って無料で経理作業を行う方法
エクセルを使って無料で会計作業を行う方法を紹介します。ここでは現金出納帳を例に見ていきましょう。
以下は、現金出納帳の基本の項目となります。
- 日付:お金の出入りがあった日付を記入
- 勘定科目:勘定科目の区分ごとに内容を記入
- 摘要:取引の内容や取引先名を記入
- 入金:入金されたお金の額を記入
- 出金:支出したお金の額を記入
- 差引残高:入金があれば前の残高に金額を足し、出金があれば前の残高から引いた金額を記入
この項目を正確に記録することで、会社の現金の流れを把握します。
また、以下の4つのステップを踏むことで、現金出納帳を簡単に作成できます。
- 項目を入れる
- 罫線・ハイライトを引く
- 期首残高を記入する
- 数式を入力する
それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。
STEP①:項目を入れる
エクセルを会計ソフトとして使用する最初のステップとして、必要な項目を入力します。
まずエクセルを開き、1行目のセルに「日付」「勘定科目」「摘要」「入金」「出金」「差引残高」と順番に打ち込みます。
この段階で項目の順序を自社のニーズに合わせて調整することも可能です。例えば、備考欄を追加したい場合は、この時点で組み込むことができます。
STEP②:罫線・ハイライトを引く
罫線やハイライトなどの視覚的な工夫は、会計作業の効率と正確性を高める上で有効です。
例えば、出納帳として使用する部分のセルを選択して、格子状に罫線を引くことで、各項目が明確に区分され、データの入力ミスを防ぐことができます。
さらに、違う欄への誤記入を防ぐため、項目ごとに異なる色のハイライトを入れるのもおすすめです。特に、金額を記入する入金・出金・差引残高の欄は、異なる色で強調することで、入力ミスを減らすことができます。
STEP③:期首残高を記入する
次に、会計期間の開始時点での残高、つまり期首残高を入力してください。
差引残高の一番上の欄に、「期首残高(はじめの残高)」を記入し、セルには把握しておいた期首時点の現金の残高を書き込みます。
期首残高が不正確だと、以降のすべての計算に影響をおよぼすため、この数値は必ず確認し、間違いのないようにしましょう。
STEP④:数式を入力する
エクセルの数式機能を用いて、計算ミスを防ぎ、作業効率を向上させることができます。
まず、差引残高を自動計算するための数式を「期首残高」のひとつ下のセルに記入しましょう。
数式の内容は「=差引残高+入金-出金」です。この数式を入力したら、他の差引残高のセルにも同様に数式を適用します。
効率的に行うには、「差引残高」セルから一番下のセルまでを選択し、「Ctrl」キーを押しながら「D」キーを押しましょう。選択したセルすべてに同じ数式が適用され、自動計算が可能です。
会計ソフトとして使える無料のエクセルテンプレート
ここまで触れたように、エクセルを使って会計作業を始めるにあたって、一から帳簿を作成するのは時間がかかります。そこで、無料でダウンロードできる会計用エクセルテンプレートを活用するのがおすすめです。
以下にて、信頼性の高い無料テンプレートを提供しているサイトやサービスを紹介します。
- マネーフォワード クラウド会計 帳票テンプレート
- bizocean 現金出納帳
- Office テンプレート 現金出納帳
それぞれのテンプレートの特徴や使い方を見ていきましょう。
①:マネーフォワード クラウド 帳票テンプレート集
マネーフォワード クラウド会計が提供する無料の帳票テンプレート集は、経理作業に必要なさまざまな帳票が含まれており、すぐに実務で使用できるのが特徴です。
具体的には、以下のようなテンプレートが用意されています。
項目 | 説明 |
---|---|
伝票 | 入金伝票や振替伝票、出荷伝票など日々の取引を記録 |
仕訳帳 | 会社が行うすべての取引を記録 |
総勘定元帳 | 勘定科目ごとにすべての取引を集計 |
キャッシュフロー計算書 | 資金の流れを把握 |
株主資本等変動計算書 | 株主資本の流れを把握 |
貸借対照表・損益計算書 | 一定期間の経営成績・特定時点の財政状態を表示 |
このテンプレートは、エクセルやワード形式でダウンロードでき、自社のニーズに合わせてカスタマイズすることも可能です。
さらに、マネーフォワード クラウド会計のサービスを利用すれば、多くの会計処理を自動化し、業務効率を改善できます。無料テンプレートの使用から始めて、将来的には会計サービスへの移行も検討できるため、ビジネスの成長に合わせた柔軟な対応が可能です。
②:bizocean 現金出納帳
bizoceanが提供する「現金出納帳」のテンプレートは、現金の収入と支出を詳細に記録し、効率的に入出金を管理できます。
特筆すべき点は、毎年更新されるため、常に最新の年度に対応していることです。例えば、2024年用のテンプレートでは、令和6年1月から12月までの期間をカバーし、年度ごとの会計処理がスムーズに行えます。
テンプレートの特徴として、以下の点が挙げられます。
- 収入・支出・残高が一目で分かる構成で作られている
- 残高が自動的に計算され、ミスを防止できる
- 必要に応じて項目の追加や修正ができる
- コスト面での負担がない
このテンプレートを活用することで、会社の資金フローを正確に把握し、効率的な会計管理を実現できます。特に、会計ソフトの導入に踏み切れない小規模事業者や個人事業主にとって、貴重なツールとなるでしょう。
③:Office テンプレート 現金出納帳
Microsoft Officeが提供する現金出納帳テンプレートは、会計ソフトとしてエクセルを活用したい方にとって、毎日の現金管理を簡単に行うことができ、自動の計算機能もついている便利なツールです。
項目と金額を入力するだけで、残額が自動的に算出されるため、帳簿処理がスムーズに行えます。これにより、人為的なミスを減らし、正確な会計記録を維持できます。特に、日々の現金の出入りをしっかりと管理することは、健全な財務管理の基本です。
さらに、このテンプレートはMicrosoft Office搭載のPCであれば、すぐに使用できます。会計ソフトの導入に踏み切れない小規模事業者や、個人事業主にとって大きなメリットです。
また、テンプレートはカスタマイズが可能なことから、自社のニーズに合わせて項目の追加やレイアウトを変更できます。
エクセルを使って会計作業を行う際のメリット
エクセルを会計ソフトとして活用するメリットは、以下の3つです。
- 導入コストが抑えられる
- 関数やマクロを使えばデータをカスタマイズできる
- データの互換性が高い
下記にて、それぞれ解説します。
メリット①:導入コストが抑えられる
エクセルを会計ソフトとして使用するメリットは、導入コストを抑えられることです。
多くの企業や個人事業主は、すでにMicrosoft Officeがインストールされたパソコンを所有しています。つまり、追加の費用をかけることなく、すぐに会計作業を始められるのです。
仮に新規でエクセルをインストールする必要がある場合でも、専用の会計ソフトと比べると費用は抑えられます。例えば、Microsoft 365 Personal(年間契約)は1年あたり12,000円程度で利用できます。多くの会計ソフトの年間利用料と比較しても、かなり経済的です。
特に、起業したばかりの企業や小規模事業者にとって、この初期投資の抑制は大きな魅力となります。
メリット②:関数やマクロを使えばデータをカスタマイズできる
エクセルの強みは、既製の会計ソフトにはないその柔軟性にあります。
関数やマクロを活用することで、自社のニーズに合わせて会計データを自由にカスタマイズすることが可能です。
例えば、SUM関数を使えば、特定の期間の売上や経費を簡単に集計できます。また、IF関数を活用すれば、条件に応じて自動的に勘定科目を振りわけることも可能です。さらに、マクロを使用すれば、定期的な会計処理の自動化もできます。
このようなカスタマイズにより、会社の成長に合わせて会計システムを最適化できるのです。
メリット③:データの互換性が高い
多くの会計ソフトがエクセル形式のデータインポート機能を備えているため、これまでの会計データを無駄にすることなく、スムーズに移行できるのも利点です。
エクセルは世界中で広く使用されているソフトウエアであり、ほとんどのパソコン環境で問題なく動作します。これにより、異なる部署間や取引先とのデータ共有がスムーズに行えます。
さらに、エクセルのデータは、スマホやタブレットからも閲覧・編集が可能です。加えて、Microsoft 365を利用すればクラウド上でデータを管理でき、外出先からでも最新の会計情報にアクセスできます。
また、将来的に専門の会計ソフトに移行する際も、エクセルのデータは比較的容易に変換できる点を踏まえても、データの互換性の高さは大きなメリットといえるでしょう。
エクセルを使って会計作業を行う際のデメリット
エクセルを会計ソフトとして活用する際には、以下のデメリットも存在します。
- 帳簿のフォーマットを作る必要がある
- 複式簿記の基礎知識を持っておく必要がある
- インボイスなど法改正にも自力で対応しないといけない
それぞれ見ていきましょう。
デメリット①:帳簿のフォーマットを作る必要がある
エクセルを会計ソフトとして使用する際の大きな課題は、帳簿のフォーマットを自作する必要があることです。
専用の会計ソフトとは異なり、エクセルには会計用のフォーマットがあらかじめ用意されていません。そのため、自社のニーズに合わせて帳簿のレイアウトを一から設計します。
例えば、現金出納帳を作成する場合、日付、勘定科目、摘要、入金、出金、残高などの項目を適切に配置し、計算式を設定する必要があります。この作業には時間と労力がかかり、会計の知識が不十分な場合は、適切なフォーマットを作成するのに苦労することがあるでしょう。
また、作成したフォーマットが会計基準に適合しているか、法的要件を満たしているかを確認する必要もあります。この作業は、特に会計に不慣れな起業家や小規模事業者にとって大きな負担となることも少なくありません。
デメリット②:複式簿記の基礎知識を持っておく必要がある
エクセルを使って正確な会計記録を行うためには、複式簿記の基礎知識が不可欠です。
複式簿記は、すべての取引を借方と貸方の2つの側面から記録する方法で、会計の基本原則です。
しかし、エクセルには複式簿記の仕組みが組み込まれていないため、ユーザー自身がこの原則を理解し、適切に適用する必要があります。
例えば、売上が発生した場合、「売上」を記録するだけでなく、「売掛金」の増加も記録します。その後お金が入ってきたら、「現金」の記録だけでなく、「売掛金」を減少させなければなりません。
複式簿記の知識がない場合、単純な収支の記録はできても、正確な財務諸表の作成や税務申告に必要な情報の抽出が難しくなることもあります。このため、エクセルを会計ソフトとして使用する前に、複式簿記の基礎を学ぶ時間と労力が必要です。
デメリット③:インボイスなど法改正にも自力で対応しないといけない
エクセルを会計ソフトとして使用する際のデメリットには、税制改正や会計ルールの変更に自力で対応しなければならないことも挙げられます。
例えば、2023年10月から導入されたインボイス制度への対応は顕著な例です。この制度変更に伴い、請求書や帳簿の記載事項が変更されたため、登録番号の記載欄の追加、また適用税率ごとの消費税額の明記など、新たな項目を設定し直す必要があります。
また、軽減税率の導入に伴う税率の区分管理など、複雑化する税務処理にも自力で対応しなければなりません。
このような法改正への対応は会計や税務の専門知識がないと適切に行えず、誤った対応をすれば税務上のリスクにもつながるため、特に注意が必要です。
会計ソフトを使用するメリット
ここまで解説してきたように、エクセルを使って無料で会計業務を行うことは可能ですが、個人事業主や小規模な企業であっても、会計ソフトの導入を検討するのがおすすめです。
会計ソフトを使用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 直感的な操作で運用できる
- 入力・計算ミスを防げる
- 財務状況がリアルタイムに把握できる
それでは、各メリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット①:直感的な操作で運用できる
会計ソフトの大きな利点は、直感的な操作で運用できることです。
エクセルとは異なり、複雑な関数やマクロの知識を必要とせず、簡単な操作で会計処理を行えます。
例えば、多くの会計ソフトでは、フォームに沿って入力するだけで自動的に仕訳を作成できます。
また、勘定科目の選択の際、どの勘定科目を選べばよいかヘルプで対応してくれる機能を採用しているものもあるほどです。これにより、会計の専門知識が少ない方でも、スムーズに会計業務を行うことができます。
さらに、インボイス制度などの法改正にも対応したシステムが多く、ソフトウエアのアップデートによって最新の会計ルールに自動的に対応できます。
メリット②:入力・計算ミスを防げる
会計ソフトを使用することで、入力ミスや計算ミスを減らすこともできます。
多くの会計ソフトは、銀行口座との連携機能を備えており、取引データを自動的に取り込むことができるからです。
例えば、クレジットカードの利用履歴や銀行口座の入出金履歴を自動で取り込み、適切な勘定科目に自動で仕訳を作成するシステムもあります。
また、他の帳簿への転記も自動化されるため、転記ミスのリスクが減少するのもメリットです。
さらに、会計ソフトには計算機能が組み込まれていることから、合計額や残高の計算も自動で行われます。これにより、手計算による計算ミスを防ぐことができ、より正確な会計処理が可能です。
メリット③:財務状況がリアルタイムに把握できる
会計ソフトを使用することで、企業の財務状況をリアルタイムに把握できます。
多くの会計ソフトには、キャッシュフローや売上実績のレポートを自動作成する機能が搭載されています。
例えば、日々の取引データを入力するだけで、その都度集計が行われ、最新の財務状況を反映したレポートが自動生成されるなどの機能です。
また、グラフや図表を用いた視覚的なレポートを提供する会計ソフトも多く、複雑な財務データを直感的に理解できます。この機能は、投資家や金融機関への報告、あるいは社内での経営会議などで有用です。
このように、現在の売上状況や資金繰りの状況を即座に確認でき、迅速な経営判断も可能になります。
会計ソフトを使用するデメリット
会計ソフトを導入する際には、以下のデメリットも考慮する必要があります。
- 会計ソフトの操作を覚えるまで一定の時間が必要
- クラウド型会計ソフトの場合はコストが継続的にかかる
- インストール型会計ソフトの場合は法改正への対応が必要
さまざまな種類の会計ソフトがあるため、自社に適したものを選択することが重要です。選択を誤ると、期待した効果が得られないこともあります。
では、それぞれ見ていきましょう。
デメリット①:会計ソフトの操作を覚えるまで一定の時間が必要
会計ソフトを初めて導入する場合、その操作に慣れるまでには一定の時間が必要です。
会計ソフトの機能や操作方法が、従来の手作業やエクセルを使用した会計処理とは大きく異なるためです。
例えば、仕訳の入力方法や帳簿の閲覧方法、レポートの作成手順など、ソフト特有の操作を習得する必要があります。特に、会計知識に乏しい従業員がいる場合、トレーニングにさらに時間がかかることも少なくありません。
ただし、多くの会計ソフトは直感的な操作を心がけて設計されているため、基本的な操作は比較的短期間で習得できるでしょう。
デメリット②:クラウド型会計ソフトの場合はコストが継続的にかかる
クラウド型会計ソフトは、1回限りの買取型ではなく、定期的に使用料を支払って利用するサブスクリプション方式が一般的です。このため、毎月または毎年など、継続的にコストがかかります。
例えば、人気のクラウド型会計ソフトの場合、月額数千円から数万円程度の費用が発生します。機能や利用人数によって料金が変動するため、企業規模が大きくなるほどコストも増加する傾向にあります。
一方で、クラウド型会計ソフトは常に最新版を利用でき、法改正への対応やセキュリティアップデートが自動的に行われる点はメリットです。
また、初期導入コストが低いことから、小規模事業者や起業したばかりの企業にとっては、導入のハードルが低いことも見逃せません。
デメリット③:インストール型会計ソフトの場合は法改正への対応が必要
インストール型会計ソフトを使用する場合、法改正への対応は自身で行う必要があります。クラウド型会計ソフトとは異なり、自動的にアップデートが行われないためです。
例えば、消費税率の変更やインボイス制度の導入など、重要な法改正が行われた場合、ソフトウエアのアップデートを手動で行う必要があります。
このアップデートが有償の場合もあり、追加のコストが発生する点はデメリットでしょう。
また、アップデートを怠ると、最新の法令に準拠した会計処理ができなくなりかねません。結果として、税務申告や財務報告の際に問題となります。
ただし、インストール型ソフトは、インターネット環境に依存せずに利用できるため、オフライン環境での作業が可能です。データをローカルで管理できることから、セキュリティに敏感な企業にとっては魅力的な選択肢となります。
経理DXを目指すならReaLightへご相談ください
エクセルを使った会計作業や会計ソフトの導入には、それぞれメリットとデメリットがあります。
しかし、経理業務全体の効率化を目指すなら、会計システムの導入という選択肢も検討する価値があるでしょう。
ReaLightでは会計システムの導入支援や、その後の会計システムを使ったアウトソーシング業務を請け負っています。
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例えば、会計ソフトの導入を検討している企業には、最適なシステムの選定から導入支援まで一貫したサポートを提供し、また、既存の経理プロセスの見直しや、デジタル化による業務効率化など、包括的な経理DXの実現をサポートします。
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