2024年のビジネス環境において、経理や会計業務の効率化がますます求められる中、freeeとマネーフォワードはクラウド会計システムとして注目されています。
どちらのシステムも、会計処理に優れており、似通った点が多いため、「正直どちらのシステムでも変わらないのでは?」とお考えでないでしょうか。
2つのシステムには得意な機能があり、利用すべき人・企業の特徴も異なります。そのため、両システムの特徴をよく理解した上で、自社に合ったシステムを選ぶのが重要です。
この記事では、会計システムfreeeとマネーフォワードの詳細な比較を通じて、それぞれの特徴や機能を解説します。
各システムの特徴をよく理解しないでシステムを決めてしまうと、思ったような機能が使えず、導入後すぐに別のシステムへ変更するなど、かえって手間がかかる恐れがあるため、注意が必要です。
経理業務の効率化や財務の可視化を図りたい方に役立つ記事となっているため、ぜひ最後までご覧ください。
各システムの利用がおすすめな人・企業
まずはじめに、各システムの利用がおすすめな人について結論からお伝えします。
freeeとマネーフォワードは、扱える機能が似ているものの、想定しているユーザーが異なるため、注意が必要です。
freeeを利用すべき人・企業の特徴
freeeを利用すべき人・企業の特徴には、以下が挙げられます。
- 経理経験が少ない
- 会計・経理に関する専門知識がない
- 外部システムとのAPI連携を想定している
freeeは操作インターフェースが直感的であり、システム内で使われる会計用語が少なめに設計されています。そのため、ユーザーは難しい専門用語を知らずとも、簡単に経理処理を実行できます。
また、はじめて会計システムを導入する企業や個人に対しても、その扱いやすさから、導入しやすいという特徴も持っています。さらに、freeeには会計データを自動で記帳する機能が備わっており、銀行明細データを自動で取り込み・AIによる仕訳が可能です。
経営判断に役立つキャッシュフロー分析レポート、プロジェクトごとの損益計算を効率的に行えるタグ機能などの分析ツールも豊富に備えており、ビジネスの様々な面をサポートします。
また、外部システムとのAPI連携を想定する場合も、freeeの提供する充実したAPIリファレンスにより、連携開発が可能です。
マネーフォワードを利用すべき人・企業の特徴
マネーフォワードを利用すべき人・企業の特徴として、以下が挙げられます。
- 経理経験がある
- 会計システムの操作に慣れている
- 様々な預金口座やクレジットカードの明細を幅広く連携したい
伝票形式の入力に慣れた方や、会計や簿記に関する知識や経験が豊富な方は、様々な機能を駆使して業務をこなせるでしょう。オンプレミス型のシステムに精通している経理の方でも、スムーズに移行できるように工夫されています。
また、UIも、他の会計システムに慣れている方が、直感的に操作しやすいデザインになっています。
そのほか、マネーフォワードは2,400以上の金融機関サービスとの幅広い連携が可能です。そのため、様々な銀行の預金口座や、クレジットカードの明細を幅広く連携したい方にも適しています。
freeeとマネーフォワードの業界での立ち位置
freeeとマネーフォワードは、利用者のニーズに合わせた独自の立ち位置を築いています。
本章では、freeeとマネーフォワードのそれぞれの利用者・ERPに対する考え方について解説します。
それぞれの項目に基づき、両システムの業界内での位置づけについて掘り下げていくので、ぜひ参考にしてください。
利用者の割合
freeeとマネーフォワードは、それぞれメインとなる利用者層が異なります。
freeeは、零細企業・中小企業にも使われていますが、個人事業主からの支持が特に多いとされています。
経理初心者や簿記の知識が少ない方向けに設計されており、税金計算の自動化などの機能によって会計作業を簡単に行えるようにしているためです。
一方、マネーフォワードは、そのユーザーベースが法人と個人事業主のいずれも一定のシェアがあり、特に零細企業・中小企業での利用が多いとされています。
それぞれのデータを踏まえると、freeeとマネーフォワードは、それぞれのターゲット市場において異なるポジションを確立していることがわかります。
ERPに対する考え方
次に、ERPに対する考え方を見てみます。
ERP(Enterprise Resources Planning)とは、企業の経営資源を有効活用の観点から管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のことです。
まず、freeeは、会計プロセスだけでなく販売、在庫、固定資産管理などの業務機能を1つのデータベース内で一括管理し、企業の経営情報をシームレスに統合することを目指しています。
そのため、多様な業務を網羅的に管理したいと考える企業に向けられた、いわゆる統合型ERPパッケージと言えます。
統合型ERPは、ユーザーが1つのシステムで企業の全体像を把握し、意思決定をサポートする情報を簡単に取得できるようにするため、運営効率の向上に貢献するでしょう。
一方、マネーフォワードは個別の業務ニーズに合わせて必要な部分だけを選択し、別のシステムと組み合わせるアプローチをとっています。
例えば、MFクラウド請求書の専用システムを契約することにより請求書の発行管理を行えます。
そのため、会計業務に特化した基本システムとして始め、ビジネスが成長したり、業務が多様化したりした場合に、追加のニーズに応じて他のアプリケーションを実装できるカスタマイズ型ERPだと言えるでしょう。
このことから、特に選択した機能に基づいてシステムをカスタマイズしたい事業者や、段階的なシステム導入を計画しているスモールビジネスオーナーに適していると言えます。
freeeとマネーフォワードの特徴の違い
ここからは、freeeとマネーフォワードの特徴の違いを紹介します。それぞれのサービスの主要な特徴を見ていきましょう。
freeeの特徴
freeeは経費の精算や請求書の作成機能が組み込まれており、外部サービスとのAPI連携も充実しているのが強みです。
自動で帳簿を記録する機能から始まり、請求書の作成、経費の精算、給料の計算に至るまで、一通りの機能がfreeeの中で備わっていることでシームレスな経理業務が実現可能です。
さらに、APIを公開しており、様々なビジネスアプリケーションとスムーズに連携可能です。
また、機能が豊富でありながらも比較的低価格でコスト効率に優れ、使いやすさに定評があります。
また、画面の見やすさに定評があり、直感的に操作しやすいという特徴もあります。そのため、会計や簿記の知識が少ない初心者でも比較的簡単に基本的な機能を使いこなせるでしょう。
一方で、直感的な操作性や独自の特徴を重視しているため、会計機能にはいくつかの制限があります。
例えば、freeeは補助科目という概念がなくタグ機能を使用する形となっており、通常の会計システムに慣れている方からすると、慣れるまで時間を要する可能性があります。
また、電話・チャット・メールによるサポートは提供されていますが、対応の迅速さや回答の質にばらつきが見られることもあります。
マネーフォワードの特徴
マネーフォワードの強みは、経費精算や請求書の作成などの専用システムがそれぞれラインナップされていることが挙げられるでしょう。
また、銀行、クレジットカード、電子マネー、POSレジといった多様なサービスとスムーズにデータを連携できます。連携データは自動で入力され、仕訳も自動化されるため、手間の削減が可能です。
freeeのような統合型ERPとは異なり、自社で導入したい機能に特化した専用システムのみを導入することが可能です。
また、外部サービスとのAPI連携機能も拡充中です。一方、簿記的発想での仕訳計上に関しては柔軟性がありますが、会計機能そのものは、中堅規模以上の会社からすると、少し物足りないと感じられることがあるかもしれません。
また、サポートサービスに関しても、質やレスポンスの速度に波がありますが、これはfreeeと同様です。
freeeとマネーフォワードの機能比較
ここからは、freeeとマネーフォワードの機能を比較します。
なお、それぞれの機能は記事の公開時点(2024年2月時点)でのものであり、今後のアップデートで変更される可能性があることをご了承ください。
以下に分けて、両システムの特徴を詳細に見ていきましょう。
- 仕訳の切り方
- API連携
- 会計機能
- スマホ対応
それぞれの項目についてより具体的に説明します。
freeeとマネーフォワードの仕訳の切り方
freeeとマネーフォワードにおける仕訳の切り方は、以下のとおりです。
freee | マネーフォワード | |
---|---|---|
自動仕訳の実装 | あり | あり |
利用者の入力ハードル | 低い | 比較的高い |
会計知識 必要度 | 低い | 高い |
記帳の操作性 | 直観的 | 伝票形式 |
freeeは「自動仕訳」機能を備え、伝統的な借方・貸方の入力フォームを使わず、銀行やクレジットカードの明細をもとに自動的に仕訳を作成できます。
さらに、直感的に操作できるため、経理の未経験者であっても容易に取引の登録が可能です。
一方、マネーフォワードは入力や仕訳に関して、より専門的な借方・貸方の入力フォームを取り入れており、経験豊富な経理担当者にとっては慣れ親しんだ操作が可能です。
しかし、未経験者にとっては会計の専門用語や手続きに慣れるまで一定の学習が必要になります。
freeeとマネーフォワードのAPI連携
次にfreeeとマネーフォワードのAPI連携を見ていきましょう。
freee | マネーフォワード | |
---|---|---|
連携可能なアプリの種類 | 金融機関等サービスに加え、Salesforce等100以上の業務アプリとの連携が充実 | 2,400以上の金融機関等サービスとの連携が充実 |
開発者サポート | 開発者サイト、APIドキュメント提供(開発者サイトはfreeeの一通りの機能に対応) | 開発者サイト、APIドキュメント提供(特定のプロダクトについてのみ開発者サイトあり) |
freeeのAPI連携は、100以上の業務アプリやSalesforceといったCRM(顧客関係管理)ツールとの連携が可能で、業務の効率化と一元的な顧客情報の管理を可能にします。
開発者サイトや公開されたAPIを通じて、専門の技術者が実装を行うことで、手作業によるデータ入力ミスを減らし、財務管理の自動化が可能です。
一方で、マネーフォワードは2,400以上の金融機関サービスとのAPI連携機能を提供しており、その幅広い金融機関との連携は、銀行やクレジットカード、証券会社などの多様な金融サービスとのデータ同期を可能にしています。
freeeとマネーフォワードのAPI連携について検討する際には、自社の必要とする業務アプリや金融機関との互換性、セキュリティ要件、技術者のリソースと知識を総合的に考慮することが重要です。
freeeとマネーフォワードのその他の会計機能
それぞれの会計システムには独自の機能が備わっており、互いにメリットが存在します。
ここでは、freeeとマネーフォワードの会計機能に焦点を当てて比較します。
freee | マネーフォワード | |
---|---|---|
取引分類 | タグを使用 | 補助科目を使用 |
試算表の集計 | タグを利用して集計可能 | 補助科目を利用して集計可能 |
freeeは、取引の分類や集計を「取引先」「品目」「メモタグ」といった機能を利用して行うことが特徴的です。
また、証憑類の種類として「領収書」「請求書」「その他」の3つから選ぶことができ、ある程度柔軟な情報管理を実現できます。
freeeを使うと、合計残高試算表を表示する際に伝票の区分を自由に指定でき、タグを使用した数値の集計が可能です。
さらに、勘定科目の詳細を補助科目だけでなく、取引先や部門タグを使って細かく表示することもできます。
一方、マネーフォワードは、補助科目を使用して取引の分類や集計を行う機能を有しています。また、証憑類の種類として「領収書」「請求書」「納品書」「契約書」「見積書」「その他」の6つのカテゴリーが用意されています。
合計残高試算表を表示する際に集計する期間は指定可能ですが、freeeのように細かく条件を設定して集計することはできません。
勘定科目の詳細表示も補助科目のみに限られ、取引先や部門別での表示や集計は行えませんが、部門ごとの集計は可能です。
freeeとマネーフォワードのスマホ対応
freeeもマネーフォワードも、それぞれの専用アプリケーション(iOS/Android)を提供しています。
freeeは、基本機能がスマートフォンにも対応しており、手軽に操作できます。スマートフォンだけでレシート撮影から画像解析、取引の登録に至る一連のプロセスにも対応可能です。
一方、マネーフォワードでは、スマートフォンで使える機能が一部に限られています。基本的な記帳作業はアプリ上で実施できますが、より細かな設定にはPCが必要です。
スマートフォン版の主な機能としては、家計簿アプリ「マネーフォワードME」と連携し、レシートの画像解析が可能です。
よくある質問
最後に、freeeとマネーフォワードで迷われている方に向けて、よくある質問をまとめて回答します。
- 社員数10名未満の会社の場合、freeeとマネーフォワードのどちらがおすすめですか?
- 会計以外の領域をカバーしたい場合、freeeとマネーフォワードのどちらがおすすめですか?
- 今後の組織拡大を想定すると、freeeとマネーフォワードのどちらがおすすめですか?
- 弥生会計と比較すると、どのように違いますか?
次項では、それぞれのポイントについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
社員数10名未満の会社の場合、どちらのシステムがおすすめですか?
社員数10名未満の会社で、経理に慣れていない場合は、freeeを使うと良いでしょう。
freeeは、会計の専門知識がない方でも比較的簡単に扱えるのが特徴です。社員の中に経理経験者がいない場合は、freeeを選ぶのがおすすめです。
また、API連携を検討している場合は、契約している銀行やよく使うクレジットカード等と連携できるかどうかの観点で検討するのもおすすめです。
会計以外の領域をカバーしたい場合、freeeとマネーフォワードのどちらがおすすめですか?
会計以外の領域をカバーしたい場合、freeeとマネーフォワードそれぞれのシステムが持つ特徴を理解し、ビジネスのニーズに合わせて選択することが重要です。
例えば、freeeは、統合型ERPとして販売管理、経費精算、ワークフロー管理などの一連の業務プロセスをスムーズに行うことができます。
一方で、統合型ERPのすべての機能は不要で、一部の機能のみで良い場合は、マネーフォワードのほうが向いているかもしれません。
会計システムを活用して、どこまでの領域をカバーしたいのかを明確にした後、どちらのシステムが適切か判断しましょう。
今後の組織拡大を想定すると、freeeとマネーフォワードのどちらがおすすめですか?
基本的にはどちらのシステムでも問題ありません。
ただし、今後組織拡大をする上で、自社の経理担当がどの程度の専門性・ITリテラシーを身につけるかによって、選ぶべきシステムが異なります。
特に、マネーフォワードは経理の専門家が操作しやすいデザインになっているため、外部から経理のプロフェッショナルを採用することを検討している企業にはおすすめです。
以下で、双方のシステムの特徴を再度まとめておきます。
freee | マネーフォワード | |
---|---|---|
ターゲットユーザー | 経理初心者 | 経理経験者 |
管理方式 | 一元管理の取引中心 | 従来型の勘定科目中心 |
分析機能 | タグ方式で高い検索性と集計機能 | 標準の会計分析機能 |
イレギュラー処理の取扱 | やや困難 | 可能 |
また、中堅企業への拡大を考えている場合は、他の会計システムも選択肢になります。
特に勘定奉行は、中堅企業による導入実績が多いため、覚えておいてください。
【法人利用】弥生会計と比較すると、どのように違いますか?
freeeとマネーフォワード、そして弥生会計はそれぞれ異なる特徴を有しており、法人の規模、業種、会計業務の複雑性、および使用者の会計知識のレベルによって最適な選択肢が異なります。
freee | マネーフォワード | 弥生会計 | |
---|---|---|---|
特徴 | 自動仕訳機能を特徴とし、経理業務の効率化をサポート | コストパフォーマンスに優れ、データ連携が豊富 | 会計システムの先駆者、操作画面がシンプルで使いやすい |
対象ユーザー | 経理初心者、自動化を積極的に導入したい企業 | レポート作成の充実性を重視する企業、リスク管理が必要な企業 | 税理士や会計業務に慣れ親しんだユーザー、小規模法人や起業間もない企業 |
弥生会計は、freeeやマネーフォワードに比べて、個人事業主やその顧問税理士が使いやすいシステムになっています。
また、freeeやマネーフォワードより歴史が長い分、税理士が利用している割合は相対的に高い可能性があります
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会計システムの選択は、社内の業務効率を大きく左右します。会計システムは一度導入すると切り替えにコストがかかるため、それぞれのシステムの特徴や機能をしっかり理解した上で選ぶことが大切です。
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