「IPOを成功させたいけど、経理部門でどんな準備をすればよいのだろう」とお悩みではありませんか?
IPOを目指す企業にとって、経理部門の役割は非常に重要です。IPOの準備には、通常の経理業務とは異なる特有の要求事項があり、専門的なスキルが求められます。
本記事では、IPO準備に必要な経理業務やスキル、人材獲得の方法について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
IPOとは
IPO(Initial Public Offering)とは、「新規株式公開」のことを指し、企業が証券取引所に株式を上場することで、一般の投資家がその企業の株式を購入できるようになります。
IPOが成功すれば、企業は資金調達の手段を広げ、ブランド価値の向上や信頼性の確保が期待できます。
しかし、IPOには厳格な条件が課されているため、それをクリアするためには準備が必要です。
IPOの条件
IPOの条件は、形式要件と実質審査基準の大きく2つに分類されます。
- 形式要件
- 実質審査基準
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
条件①:形式要件
形式要件とは、IPOを目指す企業が上場するために必要な法的手続きや書類の整備のことです。
具体的には、一定数以上の株主を確保すること、上場申請書や事業報告書、財務諸表などの書類を正確かつ適時に提出すること、そして過去数年間の決算書を適正に開示することが求められます。
これらの要件を満たすことで、企業は市場の透明性と信頼性を確保し、上場のプロセスを円滑に進めることができます。
条件②:実質審査基準
実質審査基準とは、IPOを目指す企業が、経営内容や財務状況が一定の基準を満たしているかを確認するための要件です。
具体的には、安定した収益性を確保していること、健全な財務基盤を持つこと、そして内部管理体制が整備されていることが求められます。
これらの基準をクリアすることで、企業は投資家に対して信頼性と成長性を示すことが可能です。
IPOの流れ
IPOのプロセスは、通常数年にわたる準備期間を要し、N-3期以前、N-2期、N-1期、N期(上場年度)に分けて進行します。それぞれの段階で行うべき主な取り組みについて見ていきましょう。
N-3期以前:初期準備段階
初期準備段階であるN-3期以前には、①IPOの検討、②IPOに向けた関連体制の整備を行います。
①IPOの検討
まず第一ステップとして、企業がIPOを検討し始めます。IPOの目的やメリット、デメリットを分析し、経営陣と主要なステークホルダーとの意見交換を通じて、IPOを実施するかどうかの意思決定が行われるのが一般的です。
②IPOに向けた関連体制の整備
IPOの実施が決定すれば、IPO準備チームの編成や外部の専門家(証券会社、監査法人、法律事務所など)の選定を行います。経理部門は、この段階で内部管理体制の強化や財務報告システムの整備を始めるのが一般的です。
N-2期:準備の本格化
N-2期には、③内部管理体制の強化、④決算体制の整備など、準備が本格化します。
③内部管理体制の強化
内部統制の整備やガバナンス体制の強化を進める段階です。経理部門は、正確な財務データの提供と内部監査の実施を通じて、企業の透明性と信頼性を高める準備を行います。
④決算体制の整備
また、決算書類の適正な作成と開示のための体制を整える段階です。監査法人による監査を受け、財務諸表の適正性を確認します。経理部門は、財務諸表の整備と監査対応に集中します。
N-1期:最終準備段階
最終準備段階であるN-1期では、⑤取締役会決議、⑥上場申請書の準備、⑦取引所審査(形式要件・実質基準要件のクリア)が必要になります。
⑤取締役会決議
IPOを実施するための具体的な計画やスケジュールを取締役会で承認します。必要な資金調達額や発行する株式の種類などを決定するのもこの段階です。
⑥上場申請書の準備
取締役会で具体的な事項が決定すれば、証券取引所に対して上場申請を行うための書類を準備します。企業概要、事業内容、財務状況に関する詳細な情報を含む上場申請書や事業報告書を正確に作成します。これらの書類作成において重要な役割を果たすのが経理部門です。
⑦取引所審査(形式要件・実質基準要件のクリア)
最後に、証券取引所による審査が行われ、企業が形式要件と実質基準要件を満たしているかどうか確認されます。正確な財務情報の提供と内部統制の整備を通じて、審査を通過できるようにサポートするのが経理部門の役割です。
N期(上場年度):IPOの実施
N期(上場年度)には、いよいよ⑧IPO(上場)が行われます。
⑧IPO(上場)
上場当日には、新規株式が取引所で売買され、市場における企業の評価が始まります。上場後も企業は継続的な情報開示やガバナンスの強化を通じて、投資家との信頼関係を維持する必要があります。
このように、IPOは数年にわたる準備が必要となり、経理部門は専門的な知識と正確な業務遂行が必要です。企業が上場に向けてスムーズに進むための重要な役割を担うのが経理部門といえるでしょう。
IPO準備における経理業務
IPOを成功させるためには、経理部門が中心となって多岐にわたる業務を遂行することが求められます。以下にて、IPO準備に必要な5つの経理業務について解説します。
- 財務諸表の作成
- 経理規定の作成
- 監査法人への対応
- 証券会社・証券取引所の審査対応
- その他体制整備
経理業務①:財務諸表の作成
IPO準備において最も重要な業務の一つが財務諸表の作成です。
財務諸表は、企業の経営状況や決算時の財政状況を示す書類であり、投資家に対して企業の財務健全性を示す重要な情報となります。
IPOでは、決算短信や有価証券報告書などの情報開示書類も必要です。これらの書類を正確かつ適時に作成することが経理部門に求められます。
経理業務②:経理規定の作成
IPOの要件には、「内部統制の評価」が含まれています。そのため、経理規定の作成とその運用が重要となります。
経理規定は、企業内の経理業務の指針となるものであり、その規定に基づいた業務運営がなされているかが審査されます。
内部統制の強化を図り、透明性と信頼性を高めるために、経理規定の整備は欠かせません。
経理業務③:監査法人への対応
IPO準備では、監査法人の公認会計士から監査を受ける必要があります。
この監査は、IPO直前2期間の財務諸表が対象です。監査前のヒアリング(ショートレビュー)対応や、生じた問題点の改善が必要です。
経理部門は、監査法人とのコミュニケーションを密に取り、指摘事項への迅速な対応と改善を行うことが重要です。
経理業務④:証券会社・証券取引所の審査対応
証券会社や証券取引所の審査への対応も重要な業務の一つです。
これらの審査機関からの指摘を受けた場合は、迅速に改善を行うことが求められます。
審査対応においては、正確性とスピード感の両方が求められるため、経理部門は迅速かつ的確に対応できるようにしておきましょう。
経理業務⑤:その他体制整備
最後に、社内の体制整備も重要な業務です。具体的には、システムの導入や業務フローの整備などが挙げられます。
経理担当者はこれらの体制整備の先頭に立ち、企業全体の準備状況を把握しながら進める必要があります。
これにより、全社的な統制と円滑な業務運営が実現でき、企業はIPOの成功に向けた基盤を確立し、投資家からの信頼を得られます。
経理部門は、IPO準備の中核として重要な役割を担っているのです。
IPO後の経理部門の役割
IPOを成功させた後も、経理部門には主に3つの役割があります。
- 継続的な情報開示
- 内部統制の維持・強化
- 投資家対応
上場企業としてのステータスを維持し、投資家や規制当局からの信頼を確保するためです。それでは、詳しく見ていきましょう。
役割①:継続的な情報開示
上場後、企業は定期的な情報開示義務を負います。
四半期ごとや年次ごとの決算報告、臨時報告事項の開示など、経理部門はこれらの報告を正確かつ適時に行う責任があります。
これにより、投資家に対して企業の財務状況や経営成績の透明性を維持することが可能です。
役割②:内部統制の維持・強化
IPO前に整備した内部統制は、上場後も継続的に維持・強化する必要があります。
経理部門は、内部監査を定期的に実施し、不正防止や業務の効率化を図りましょう。
また、規制環境の変化に対応するために、内部統制の見直しや改善を行うことも重要です。
役割③:投資家対応
IPO後は、投資家からの問い合わせや説明会の開催など、投資家への対応が増加します。
経理部門は、IR部門と連携して投資家向けの資料を作成し、企業の財務状況や経営戦略を明確に伝える役割を担います。
正確な財務情報の提供と適切なコミュニケーションを通じて、投資家との信頼関係を維持することが重要です。
以上のように、IPO成功後の経理部門には多岐にわたる重要な役割が求められます。上場企業としての責任を果たし、持続的な成長と信頼性を確保するために、経理部門は継続的な努力と改善を続ける必要があるのです。
IPO経理人材に求められるスキル3選
IPOを成功させるためには、経理部門の人材が持つべきスキルが重要です。以下にて、IPO経理人材に求められる3つのスキルを紹介します。
- ミスのない事務スキル
- 資料作成スキル
- コミュニケーションスキル
スキル①:ミスのない事務スキル
IPO準備を行う経理には、ミスのない事務スキルが求められます。
IPOのプロセスでは、企業の透明性や正確性が重要であり、投資家や規制当局からの信頼を得るために、経理業務においてミスが許されません。
適切なデータ入力や記録の保持、正確な財務諸表の作成など、細心の注意を払った業務遂行が求められます。
スキル②:資料作成スキル
資料作成スキルも重要なスキルの一つです。IPOに向けて、財務諸表や経理規定、上場申請書など、多岐にわたる資料を作成する必要があります。
これらの資料は、企業の財務状況や内部統制を正確に示すものでなければなりません。
また、IPOまでのスケジュールが厳しいため、限られた時間内で質の高い資料を効率的に作成できるスキルが求められます。
スキル③:コミュニケーションスキル
IPO準備では、監査法人や証券会社、証券取引所など多くの外部機関とのコミュニケーションが不可欠です。これらの機関とのやり取りにおいて、相手の指摘やアドバイスを理解し、適切に修正対応を行うことが求められます。
さらに、社内においても、新たな社内ルールや内部統制の円滑な運用のために、明確かつ効果的なコミュニケーションスキルが必要です。
これら3つのスキルを持つ経理人材は、IPOの準備と実行において中心的な役割を果たし、企業の成功に大きく貢献するでしょう。正確性、効率性、そして円滑なコミュニケーションが、IPOのスムーズな進行を支える鍵となるのです。
IPO実現のための経理人材を獲得する方法2つ
IPOを実現するためには、専門的なスキルと知識を持つ経理人材が不可欠です。以下に、IPO実現のための経理人材を獲得する2つの方法を紹介します。
- 経理担当者の育成
- 経理人材の採用
方法①:経理担当者の育成
一つ目の方法は、現在の経理担当者を育成することです。既存の経理担当者にIPO準備を担当してもらうためには、企業経理に関する知識やスキルを基盤に、IPO特有の手続きや要件について新たに学んでもらう必要があります。
内部で育成する利点としては、既存の経理担当者が企業の財務状況や内部の仕組みを既に理解しているため、コミュニケーションがスムーズに進むことです。
しかし、IPOに関する知識を一から学ぶ必要があり、対応が難しいケースも考えられるため、外部の研修やセミナーの活用が推奨されます。
方法②:経理人材の採用
二つ目の方法は、新たに経理人材を採用することです。特に、IPO対応の経験がある経理人材を採用できれば、IPO準備をスムーズに進めることが期待できます。
この方法の利点は、即戦力としての知識とスキルを持った人材を得られることです。
しかし、採用した経理人材が自社の経理状況や内部プロセスを把握するまでには時間がかかる可能性もあります。そのため、採用後は、早期に組織に馴染んでもらうためのオンボーディングプロセスを整備し、円滑な業務遂行をサポートすることが重要です。
これらの方法を組み合わせて活用することで、企業はIPO準備を効果的に進めるための経理人材を確保することができます。内部の人材育成と外部からの採用をバランスよく行うことで、強力な経理チームを構築し、IPOを成功に導きましょう。
IPOに関する経理業務はアウトソーシングもおすすめ
IPO実現のための経理人材を獲得する方法として、経理担当者の育成や新たな経理人材の採用について説明しましたが、もう一つの有効な手段としてアウトソーシングもおすすめです。
経理のプロフェッショナルに依頼することで、企業は内部リソースを節約しながら、専門知識と豊富な経験を持つ外部の専門家の支援を受けることができます。これにより、IPOに必要な複雑な財務報告や監査対応、内部統制の整備などを円滑に進めることが可能となります。
また、アウトソーシングにより、最新の規制やベストプラクティスに準拠した業務を行うことができ、IPOの成功確率を高めることができます。特に、時間やリソースに制約がある企業にとって、アウトソーシングは効率的かつ効果的な解決策となるでしょう。
IPO準備の経理には高いスキルが必須|人材確保でお悩みならReaLightにご相談ください
IPO準備に従事する経理担当者には、非常に高いスキルと専門知識が求められます。財務諸表の正確な作成、内部統制の整備、監査法人や証券取引所との対応など、多岐にわたる業務を円滑に遂行するためには、経験豊富で高度なスキルを持つ人材が不可欠です。
しかし、そのような人材を自社で確保するのは容易ではありません。
ReaLightでは、IPOに特化した公認会計士も在籍しており、システムの導入からアウトソーシングまで一貫したサービスを提供しております。IPOの複雑なプロセスを熟知しており、企業のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案しますので、お悩みの方はぜひReaLightにご相談ください。
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