「経理初心者を採用したものの、どのように教育したら良いのだろう?」とお悩みではないでしょうか。また、「経理初心者を教育する際の心構えも知っておきたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、経理初心者に何を教育するべきか、必要なスキルや教育時の注意点などを紹介します。
また、経理初心者を採用する以外の経理人材不足への対応方法にも触れているので、ぜひ参考にしてください。
経理担当者に必要なスキル3選
経理は、社内の日々の取引を数値として記録し、企業の財務状況を正確に把握し、経営者等が適切な意思決定をするための基盤を築く重要なポジションです。
そして、経理の領域で活躍するためには、以下の3つのスキルが求められます。
- 簿記スキル
- 業務ツールに関するスキル
- コミュニケーションスキル
それぞれ詳しく見ていきましょう。
スキル①:簿記スキル
経理担当者にとって、簿記は必須のスキルです。
企業経理は複式簿記を基本としており、日々の業務を円滑に進めるためには、簿記スキルが不可欠です。
簿記のスキルがあるかどうかの確認方法のひとつとして、資格取得状況の確認があります。
資格 | 証明する能力 |
日商簿記1級 | より高度な経理知識・スキル |
日商簿記2級 | 一般企業の経理業務に関する知識 |
日商簿記3級 | 簿記の基本的な知識 |
また、その他の簿記資格として全経簿記、全商簿記も挙げられ、いずれも1級のレベルで日商簿記2級と同程度のレベルです。加えて、全経簿記にのみ上級が存在し、この場合は日商簿記1級と同程度です。
ただし、資格はあくまで知識の証明であり、その知識をどれだけ活用できるかは実践経験にもよります。
そのため、経理担当者の採用や教育の際には、次で紹介するスキルの有無も確認しましょう。
スキル②:業務ツールに関するスキル
経理担当者においては、簿記スキルだけではなく、業務ツールに関するスキルも必要です。
現代ではデジタル化が進んでおり、会計ソフトや表計算ソフトなどのPCツールを駆使して業務が行われます。また、会計ソフトだけでなくExcelやスプレッドシートなどを使う企業も多いです。
これらのツールを使いこなす能力は、正確かつ迅速な作業に直結するため、データの可視化や報告書の作成も早いと判断できるでしょう。
さらに、会計知識とPCスキルは相互に補完し合う関係にあるものです。
会計知識があれば、会計ソフトを使用する際にもその機能をより深く理解し活用できます。逆に、業務ツールに関するスキルがあれば、会計知識が浅くてもソフトの操作を通じて徐々に会計の仕組みを理解できるでしょう。
もちろん、未経験であればどちらか一方に秀でているだけでも問題ありません。
ただ、理想を言えば、会計知識と業務ツールに関するスキルの両方を有していると良いでしょう。
スキル③:コミュニケーションスキル
経理担当者には、コミュニケーションスキルも求められます。
担当する業務によっては数字を処理するだけでなく、社内外の多様なステークホルダーとのやり取りが必要になってくるためです。
経理担当者は、社内すべての取引記録や財務報告を基にした意思決定のサポートを行います。そのため、部署間での情報共有や調整が欠かせません。
こうした多岐にわたる部署との日常的なやり取りにおいて、明確で効果的なコミュニケーションを図るスキルは業務の円滑化を図る上で不可欠です。
さらに、経理担当者は経営層への報告責任も担っています。
財務状況の分析結果や予算案の提示など、経営戦略に直結する情報をわかりやすく、かつ適切なタイミングで伝えることが求められます。
経営者に対しては、専門的な内容を簡潔に要約し、その意義や影響を明確に伝える能力が必要です。そのため、ただ情報を伝えるだけでなく、受け手の立場に立った配慮や、ときには説得力のあるプレゼンテーション能力も求められます。
未経験者の選考にあたっては、上で挙げたようなコミュニケーションスキルを持つ人材の見極めが重要です。
【採用後の教育】経理未経験者のスキルアップ方法4つ
経理未経験者を採用した場合、そのスキルアップは簡単ではありません。
そこで、経理未経験者のスキルアップを実現するために有効な4つの方法を紹介します。
- 資格取得
- 社内勉強会
- 経理初心者向けオンラインセミナーの受講
- 経理初心者向けスクールへの通学
それぞれ、以下で詳しく見ていきましょう。
方法①:資格取得
経理未経験者のスキルアップ方法の1つとして、資格取得が挙げられます。
資格取得は、業務に必要な専門性を身につけるだけでなく、自身のスキルアップに対するモチベーションを高める効果もあります。
中でも日商簿記は、経理の基本的な知識を身につけるための資格で、未経験者でも目指しやすい資格です。日商簿記を取得することで経理の基本的な業務を理解し、実際の業務に活かせます。
また、資格取得は自己成長の証ともなり、自信を持って業務に取り組むための後押しにもなるでしょう。
しかし、資格取得には時間と労力を必要とするため、会社としては、資格取得を支援する体制を整えることが求められます。例えば、勉強時間の確保、および教材費用の補助などのサポートは、経理未経験者を育てる有効な手段と言えるでしょう。
方法②:社内勉強会
経理未経験者のスキルアップ方法として、社内勉強会の開催も挙げられます。
通常、業務を通じて実践的に学習していくことが基本となりますが、それだけでは不十分な場合も多いからです。比べて、社内勉強会では、経理の基礎知識から専門的な知識まで、幅広いテーマを取り扱うことが可能となります。
また、社内勉強会は、社員間のコミュニケーションを促進し、チームワークを向上させる効果も期待できます。
加えて、サポート体制を整えるために、業務時間外で勉強時間を用意することも有効です。
会社から参加を促すため、別途給与の支払いが生じるものの、よりスキルアップの効率を高められるでしょう。
方法③:経理初心者向けオンラインセミナーの受講
経理未経験者のスキルアップには、オンラインセミナーの受講も有効です。経理の基礎知識を身につけるだけでなく、学習のモチベーション維持にも役立ちます。
一般的なオンラインセミナーには、経理の基礎から学べる教材が豊富にそろっています。また、自宅やオフィスで自分のペースで学べるため、場所や学習時間に縛られることなく、効率的に学ぶことも可能です。
さらに、オンラインセミナーには受講者同士で情報交換ができるコミュニティ機能を有するものもあります。他の受講者から学ぶことで、自分だけでは気づかなかった視点を得るきっかけにもなるでしょう。
方法④:経理初心者向けスクールへの通学
最後に、経理未経験者のスキルアップ方法として、初心者向けスクールへの通学も1つの選択肢です。
初心者向けスクールは、経理の基礎知識から実務で使用する知識までを幅広く学べる場所です。授業は経理に精通した講師が行い、初心者がつまずきやすいポイントも丁寧に教えてくれます。また、他の受講生との交流を通じて、経理に対する理解を深めることもできます。
このことから、未経験者であっても、必要なスキルを短期間で身につけられるでしょう。
なお、すべての地域にスクールがあるわけではないため、通学が難しい場合もあります。そのような場合は、オンラインの経理スクールを利用するのも1つの方法です。
経理の教育の留意点3つ
経理の教育は、時間と準備が必要です。その理由は、先に触れたように経理に要求されるスキルセットが多岐にわたるためです。
経理未経験者に必要な知識や技術を習得してもらうためには、以下の3つのポイントに留意してください。
- 会社や部署のルールを理解してもらう必要がある
- 経理の心構えを持ってもらう必要がある
- 経理の技術や知識を習得するには時間がかかる
それでは、詳しく見ていきましょう。
留意点①:会社や部署のルールを理解してもらう必要がある
会社や部署のルールとは、以下を含めた経理業務に関するすべてのプロセスを指します。
- 会社のお金の流れ
- どの書類がどこに保管されているのか
- どの仕事で誰とコミュニケーションを取る必要があるのか
経理初心者が業務を遂行する上で、上記以外にも会社独自のルールを理解していないと業務効率が落ちるだけでなく、ミスを引き起こす可能性もあります。
しかし、経理初心者への教育は時間と手間がかかるものの、十分に価値のある投資だと捉えて根気強く取り組みましょう。
留意点②:経理の心構えを持ってもらう必要がある
経理初心者への教育を始める際には、技術的な知識だけでなく、心構えを持ってもらうことも必要となります。
経理未経験者への教育は時間がかかると言われる理由の2つ目が、この心構えを持ってもらうことにあります。
経理の仕事は、社内規定や会計基準に基づいて行われるものです。このルールは、会社の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すための基盤となります。
また、経理の仕事は、数字を扱うため、その正確性が極めて重要となります。1つのミスが大きな問題を引き起こすこともあり、正確さを求める姿勢を育てることも大切です。
こうした経理の心構えを身につけることは、経理初心者の教育において特に時間を要する部分です。
ただ、経理に対する心構えがあるからこそ責任感も生まれ、正確な資料作成、さらに適切な経営判断につながると言えるでしょう。
留意点③:経理の技術や知識を習得するには時間がかかる
経理未経験者への教育において、技術や知識を習得するためには、一定の時間と経験が必要です。
経理の仕事には、毎月・四半期・半期・年間といった決まったスケジュールが存在します。そして、時期に応じた優先事項を理解し、適切に対応できるようになるまでには時間がかかるものです。
また、先に触れたように経理の仕事でもっとも重要なことは、数字を正確に扱うことです。ミスは基本的に許されないため、数字の確認は必ず複数回行うことが求められます。
こうした側面を理解するには、仕事がどういうもので、何に繋がるかを理解する必要もあるでしょう。
このことから、ここまで伝えた教育と並行して、経理業務全体の見直しも検討することも1つの選択肢です。
具体的な方法については、以下で詳しく説明します。
経理初心者を採用する以外の経理人材不足への対応方法3選
経理は企業の財務状況を正確に把握し、適切な意思決定を行うための重要な部門です。このことから、未経験者に多くを任せることはリスクを伴うと言えるでしょう。
しかし、経理初心者を採用する以外にも経理人材不足への対応方法は存在します。
以下では、3つの方法を紹介します。
- ITツールの導入
- 人材派遣の活用
- 経理代行の活用
このことから、自社の状況に合わせてどの方法が良いのかを考慮してみてください。
方法①:ITツールの導入
経理未経験者を採用する以外の方法として、まずITツールの導入が有効です。経理業務は複雑であるため初心者がすぐにすべてを理解し、実践するのは難しいでしょう。
しかし、経理業務の一部を自動化できれば、経理未経験者でも簡単に業務をこなすことが可能です。また、ツールが間違いを自動で検出・修正する機能を持っている場合、ミスが起こるリスクも軽減されます。
そのため、経理初心者の採用と教育に自信がない場合は、ITツールの導入を検討してみるのも1つの方法です。
方法②:人材派遣の活用
派遣会社に経理の人材を依頼することも、経理人材不足への対応方法の1つです。
派遣される人材は、すでに経理の専門知識を持っているため、即戦力として期待できます。そのため、一から教育するよりも時間的なロスを抑えることが可能です。
しかし、一方で人材派遣には注意点もあります。派遣される人材のスキルレベルによっては、期待したパフォーマンスを発揮できない場合もあります。そのため、派遣会社とのコミュニケーションを密に取り、必要なスキルや経験を具体的に伝えましょう。
経理初心者の採用と教育、人材派遣の活用、それぞれ一長一短があるものです。
このことから、自社の状況に合わせてどちらが良いのかを考慮してみてください。
方法③:経理代行の活用
最後に、経理代行サービスの利用によって、経理業務全体または一部を外部に任せる方法もあります。
経理代行とは、経理のプロに自社の経理業務を代行してもらうサービスのことです。
経理業務すべてを任せられる代行業者にすべてを依頼する場合もあれば、一部業務を請け負う代行業者に自社が必要とする業務だけを依頼する場合もあり、柔軟にサービスの利用ができます。
そのため、難解な税務処理や経費精算などの代行を依頼し、入力業務は自社で行うという使い方も可能です。
また、最新の税法改正などに対しても常にアップデートしているため、改正対応に時間を取られる必要もありません。
このように、経理代行の活用は、経理初心者の採用・教育に悩む際には有効な対処法の1つと言えるでしょう。
ただし、経理代行を選ぶ際には、その業務内容や費用、信頼性などをしっかりと確認することが重要です。
経理代行について、詳しくは以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。
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経理初心者の採用にはリスクが伴う | 経理のプロへの代行はReaLightにご相談ください
経理初心者の採用は、社内における経理人材不足の解消のひとつですが、リスクもあります。
例えば、採用後には資格の取得や勉強会、オンラインセミナー・スクールなどの教育コストも必要です。また、経理初心者が会社および部署のルールを覚えたり、技術や知識を得たりするには時間もかかるでしょう。
こうしたリスクを回避し、経理業務をスムーズに運用したい場合は、経理のプロへの代行も検討してみてはいかがでしょうか。
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