少人数で経理業務を行うことの多い中小企業では、一人の担当者で経理業務を担うということも少なくはないと思います。
経理業務は専門的な知識が必要なことが多く、どうしても一人の担当者しかできない業務が出てきたりと、業務が「属人化」してしまいます。
今回は「属人化」してしまうことを防ぐためにできることを挙げていきたいと思います。
■「属人化」してしまう原因
人手不足や社員一人ひとりの専門知識の欠如など様々な原因があげられます。ベテラン社員が知識を他の社員に共有せず、一人で業務を行ってしまうことも原因にあげられます。
■「属人化」によって生じる問題
ミスが発生していても発見までに時間がかかったり、その後の適切な対応が遅れてしまいます。周囲からは業務内容がわからないため業務が自己流になり業務品質の低下、業務の効率化の遅れに繋がります。
■「属人化」しないための改善策
問題を発生させる前に、まずは業務の「見える化」を進めていくことが大切です。
今回の記事では改善策の一例として、クラウド会計システム導入について簡単に説明していきたいと思います。
1. クラウド会計システムとは?
パソコンでWebブラウザが使用できる環境があればすぐに導入できる会計システムです。
パソコンにインストールする必要はなく、アカウントの作成ができればすぐに利用することができます。
データはインターネット上のサーバーに保存されています。そのため、ユーザー側でのセキュリティ対策は必須です。
2. クラウド会計システムを導入することでのメリット
手軽に利用登録できる点はもちろん、複数人でシステムを利用できるため、上記で改善策としてあげた業務の「見える化」に繋がります。
権限さえ付与すれば経理担当者だけでなく、経営者や支店の担当者がいつでも会計データの確認ができます。また、顧問税理士等にもリアルタイムで会計データを確認してもらえるのでミス発見の遅れ改善になります。
また、クラウド会計システムの中には「電子帳簿保存法」に対応しているものが多く、クラウド会計システムを導入することによって業務効率化に繋がる企業のペーパーレス化への一歩になります。また、上記の「見える化」の観点からも、帳票類や証憑類をクラウド会計システム内で複数人が同時に同じものを見ることができるため、経理業務の属人化解消に繋がります。
紙媒体で保管していた総勘定元帳や領収書などの帳票類を原本として電子化して保管できる「電子帳簿保存法」は2022年1月より施工予定の改正により、導入のハードルが格段に下がりました。
「電子帳簿保存法」について、改正のポイントを含め下記で簡単に紹介します。
3. 電子帳簿保存法とは
まず、「電子帳簿保存法」で保存できる書類は以下になります。
クレジットカードやICカードの利用明細も領収書として認められます。
スマートフォンやデジタルカメラで撮影した領収書や請求書のデータ保存も可能です。
今回の改正のポイント
ポイントは以下の2点です。
①事前承認制度の廃止
改正前は実際に電子保存を開始する3か月前に所轄の税務署への申請をし、承認されてから電子保存が開始できる、という流れでした。
改正後には承認制度が廃止されましたので、申請すればすぐに電子保存が開始できるようになりました。
②国税関係帳簿書類の保存制度の見直し
下記のように申請条件が緩和されました。改正後の条件を満たしているクラウド会計システムを導入すればすぐに申請が可能です。
スキャナ保存についての改正
スキャナ保存が認められている書類については以下の改正が実施されています。
①適正事務処理要件の廃止
以前は紙の原本とスキャナ画像が同じものかチェックが必要でしたが、この部分が廃止されました。
②タイムスタンプ付与要件の見直し
- タイムスタンプの付与期間が3日以内から最長2か月以内に延長
- 受領者の署名が不要
- 電磁記録の修正・削除をしたときに内容を記録できるシステムを利用している場合は、タイムスタンプが不要
③検索機能の確保要件の見直し
効率的に電子保存できるように要件が緩和されました。
4. クラウド会計システムの活用を
コロナ禍の今、自宅からでもアクセスすることができるクラウド会計システムはリモートワークの促進にも繋がります。
「電子帳簿保存法」も改正されて以前にくらべ導入がしやすくなりました。
まだ導入されていない企業様は一度検討されてみてはいかがでしょうか。